ミッドセンチュリーモダンの頃 #2

1962年よりニューヨークに住み、パーソンズ専門学校に通い、その後マンハッタンで会社勤めをした事は前に書きました。

その続きとしてこれを書いています。

建築家の家

ハーマンミラー社N.Y.店のショールームには、家具の配置設計を担当する部署があり、私はそこで働きました。主人は建築設計の仕事をしておりエドワードバーンズ建築設計事務所( Edward Larrabee Barnes Associates)で働いていました。

バーンズ事務所の同僚で英国から来ていた男性が、その頃マンハッタン島から出て、北へ少し行ったヨンカース(Yonkers,N.Y.)の街に家を買いました。夫婦は二人で住み、家の一部を貸して良いと言われ、私共二人はヨンカースに引っ越しました。

丁度車を買ったばかりで駐車場が欲しいときでした。その家の車庫には別棟で建築家の彼が修繕工事をし、木製のきれいにデザインされた扉がついていました。彼は自分の家も改装工事を一人で作業しながら気持ちの良い家に住んでいました。

ヨンカース駅 Yonkers,N.Y.

家は汽車の駅から坂を登り5分程歩いたところでした。ヨンカースの街は工業地帯、労働者の人々が住む住宅地域で、それ迄いたマンハッタンの街とは全く違う場所でした。周囲に古い同じ形をした一戸建て住宅が並び、住人の年齢層も老人から赤ちゃん、人種も様々、ただ黒人はあまり見かけませんでした。

ヨンカースから通勤先のショールーム迄汽車(グランドセントラルからウェストチェスター方面行きの路線)と地下鉄で通いました。朝はヨンカースから乗りマンハッタン島に入り125丁目で降り、ハーレムの大通りを東へ1ブロック歩き、レキシントン通りの地下鉄で8駅ほど南へ下り、63丁目の事務所に着きます。一時間少々です。この汽車の通勤はとても楽しい思い出でした。

ハドソン川沿いに汽車が走り、朝は対岸ニュージャージー(N.J.)側の崖に太陽の光が当たり、岩と緑がきれいにひかり、河の水がキラキラ流れるのを横に見ながら進みます。心なごむ風景を毎日飽きることなく眺めていました。

メトロノース、ハドソン線 Metro North, Hudson line

汽車は必ず座れるほどの人々、椅子に座り新聞を読む男性が多かったです。125丁目で降りハーレムの大通りを東へ向かい地下鉄に乗ります。ハーレムは黒人の街ですが朝のこの時間帯は何事もなく安心して歩いていました。帰途はグランドセトラル駅に出て、汽車に乗りヨンカース迄。駅のプラットホームは河と同じレベル、階段を登り外へ出ます。駅員は2人、のんびりした駅です。

この汽車について偶然映画の中で見ました。1984年製作、タイトル「恋におちて」メリルストリープ、ロバートデニーロがこの汽車に乗り合わせ、知り合いになる話ですが、2人が出会うシーンはクリスマスの買い物客で混雑していて私の乗っていた当時とは様子が違っていました。又、この映画の中で2人が家族へのクリスマスプレゼントを買いに入った「リッゾーリ書店(RIZZOLI)」美術書、デザインの本、建築の本などを扱う本屋、店内は古い木造の内装で図書館の様な場所で良い店だと思い時々寄っていました。

アンディーウォーホールのハイヒール

87年に約20年ぶりにニューヨークへ行った時に見たマンハッタン島には観光客が多数街の中を歩いており、60年代と街の雰囲気が全く違っていました。

好きだった靴屋(ミラー、Miller and sons )5番街57丁目の角で大きな店でしたが無くなっていました。靴のデザインは少々クラシックでしたが、かかとのヒールが少し太いのが実用的でいいなと思い見ていました。その靴屋の広告のイラストレーターだったのがアンディウォーホールと最近の新聞で知りました。どうりで彼の作品の中に女性のとても美しい色をした絵が多かったのが、納得できました。

アンディーウォーホールの靴

AndyWarholeshoedrawing

次は60年代始めのニューヨークの美術を書きたいと思っています。

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone